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防衛装備庁のレールガンはなぜ「火薬なし」で秒速2,300mの弾を撃てるのか——洋上試験も成功した電磁加速のからくり

·2026-07-10·読了 11分

防衛装備庁が試作したレールガンが、2025年6月〜7月上旬、試験艦「あすか」での洋上射撃試験で標的船への命中を確認しました。この砲は火薬を一切使わず、電気の力だけで弾丸を秒速2,300m以上に加速します。なぜ電気だけで、そんな速度が出せるのでしょうか。鍵は、電磁気の「ローレンツ力」にあります。

火薬を使わない砲は何が違うのか

従来の火砲は、発射薬(弾を撃ち出すための火薬)を燃やし、その燃焼ガスの圧力で弾を押し出します。押す力の源は火薬です。レールガン(電磁加速砲)は、この力の源を電気エネルギーに置き換えた将来砲です。防衛装備庁の資料によれば、火薬を使わないため安全性が高く、原理的に弾丸初速の大幅な増大が可能とされています。

では、その速さは何のために必要なのでしょうか。防衛省の政策評価書は、従来の装備品では対処が困難な「極超音速誘導弾(極めて速く飛ぶミサイル)」を迎え撃つ防空手段、そして遠距離から回避の難しい打撃を与える手段として、この砲を位置づけています。速い脅威には、撃つ側の弾をさらに速くして間に合わせる。そういう構想です。

レールガンの発射シーケンス——火薬なしで秒速2,300m 1 電気を蓄積 コンデンサバンク (20ftコンテナ4 台分)に充電 2 大電流放出 片方のレール→電 機子→もう片方の レールへ 3 磁場が発生 電流の周囲に磁場 が生まれる 4 ローレンツ力 磁場中の電流に力 がはたらき電機子 を押す 5 弾丸を加速 初速2,300m/s以上 (約マッハ6.7相 当)で砲口へ 発射薬の燃焼ガスではなく、電流と磁場が生む力そのものが弾を押す。マッハ換算は編集部注記(海面付近の音速基準)。
図:レールガンの発射シーケンス——火薬なしで秒速2,300m編集部作成

ローレンツ力が電機子を押すからくり

主役はふたつ。「2本のレール(電気を流す金属棒)」と、その間に挟まれた「電機子(でんきし。電気の通り道になる部品)」です。位置は、弾丸のすぐ後ろです。

発射の瞬間、片方のレールから電機子を通り、もう片方のレールへと大電流が流れます。電流が流れると、その周囲には磁場(磁石と同じ、力がはたらく空間)が生まれ、磁場の中を流れる電流には「ローレンツ力」と呼ばれる力がはたらきます。この力が電機子をレールに沿って砲口へ押し出し、前にある弾丸を一緒に加速していきます。押すのは、発射薬の燃焼ガスの圧力ではありません。電流と磁場が生む力そのものです。

この方式で、試作機は弾丸初速2,300m/s以上を達成しました。海面付近の音速で換算すると、およそマッハ6.7に相当する速さです(マッハ換算は編集部注記で、一次資料に表記はありません)。

試験艦「あすか」で確かめた洋上射撃

ただし、この大電流は簡単には用意できません。試作機の電源は「コンデンサバンク(電気をためて一気に放出する蓄電装置の集まり)」で、その装置だけで海上輸送用の20ftコンテナ4台分を占めます。砲だけでは撃てません。レールガンは、砲本体と大型電源のセットで初めて成立する装備なのです。

2025年の洋上試験では、この試作レールガンを試験艦「あすか」の後部飛行甲板に搭載しました。海の上で撃つために、海水の飛沫から砲身を守るシェル、狙いを付けるガンカメラ、砲身を上下に動かす俯仰(ふぎょう)機能、そして船の揺れに耐える補強が追加されています。標的船への射撃では、複数発の命中を確認しました。これとは別に、水平と斜め上のふたつの射角でも撃ち分け、弾がどう飛ぶかを示す弾道特性のデータを取得しています。

残る課題は電源の小型化と連射

では、実用化までに何が残るのでしょうか。一次資料が挙げる課題は4つです。第一に、総電気エネルギーを下げ、コンテナ数台分に及ぶ電源の規模を小さくするエネルギー高効率化です。第二に、連射技術です。現状の試作機は、1発ずつ撃つ単射にとどまっています。第三に、撃った後の弾がどう飛ぶかという砲外弾道と、目標に当たった際の終末効果の研究です。そして第四に、艦などへ組み込むシステムインテグレーションです。

開発を担うのは、防衛装備庁 陸上装備研究所です。基礎となる「電磁加速システムの研究」から数えて10年を超える取り組みで、後継の「将来レールガンの研究」は2026年度までの研究試作として進行中です。命中と弾道のデータは、手の中にあります。研究はこれから、コンテナ4台分の電源を小さくし、単射を連射に変える段階へ進みます。

出典(一次ソース)

  1. 防衛装備庁 技術シンポジウム2025 ポスター P-26 https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2025/pdf_exhi_pos/P-26.pdf
  2. 防衛装備庁 技術シンポジウム2025 口頭資料 s11 https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2025/pdf_oral_matl/1111_1545_s11.pdf
  3. 防衛装備庁 公式X(洋上射撃試験の発表) https://x.com/atla_kouhou_jp/status/1965701783092707680
  4. 防衛省 政策評価書「将来レールガンの研究」令和3年8月 https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2021/pdf/jizen_04_honbun.pdf

装備仕様・作戦情報は執筆時点の公開情報に基づきます。

免責本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の行動や投資、軍事作戦その他の専門的助言を目的としたものではありません。装備仕様や作戦情報は執筆時点の公開情報に基づきます。