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国産レールガン 試験艦「あすか」 で洋上射撃実施:なぜ「火薬なし」なのに秒速2,300mで弾丸を撃ち出せるのか

国産レールガンは火薬を使わず、レールに流す大電流が生む電磁気の力だけで弾丸を秒速2,300m以上に加速します。

2026-10-04
米海軍が実施した電磁レールガンの初のフル出力試験の様子
米海軍が実施した電磁レールガンの初のフル出力試験の様子

砲弾は火薬の力で撃ち出すものです。ところが日本では、火薬を使わず電気だけで弾丸を加速する砲が、すでに艦に載って海の上で試射されています。

火薬なしで、どうやって弾丸を音速の何倍もの速さまで加速するのでしょうか。

火薬の砲に残る初速の天井

火薬をつかった砲の発射速度には、限界があります。発射薬を爆発させ、生じたガスの膨張で弾を射出する構造のため、この膨張速度が物理的な制約となり、初速の上限があるのです。

防衛省は政策評価書で「従来火砲においては物理的制約(発射薬の爆発による膨張速度)による弾丸初速の限界」と記しています。

そこで、この初速の「天井」を電気の力を応用して越えようとするのが将来砲とされるレールガン(電磁加速砲)です。火薬の限界を超えた高初速化により「飛躍的に弾丸の長射程化・高威力化が可能」だと同評価書には記されています。

想定されるのは、従来の装備では対処が難しい極超音速誘導弾(防衛白書の定義でマッハ5以上、つまり音速の5倍以上で飛ぶミサイル)への防空や、遠い距離から回避することが難しい攻撃を加える場面です。

令和8年版防衛白書は、レールガンの弾はミサイルと違って推進装置を持たない点に触れ、「小型・低コストかつ省スペースで備蓄でき、多数のミサイルによる攻撃にも効率的に対処可能とされている」と説明しています。

レールと電機子に流す大電流

レールガンは、2本のレール(電気を流す金属棒)と、その間に挟まる電機子(弾を押し出す通電部品)から成り立っています。

ここに大電流を流すと、レールを流れる電流が砲身の内側に磁場を作ります。この磁場と電機子を流れる電流との間にローレンツ力(電流が磁場から受ける力)が働き、電機子を発射方向へ押し出します。

この力が電機子ごと弾をレールに沿って押し続け、砲口まで加速します。発射薬を使わないため暴発など使用時や輸送時、保管時のリスクが低くより安全とされ、原理的には弾丸初速を大幅に増やせるとされています。

20ftコンテナ4台分の電源

火薬の代わりに必要になるのが、大量の電気です。

試作機の電源はコンデンサバンク(電気をためて一瞬で放出する装置)で、充電エネルギーは5MJ(メガジュール)です。この大型装置は、一般的な大きさの20ftコンテナ4台分を占めます。

砲そのものは口径40mm、全長約6m、質量約8tです。砲身とほぼ同じ長さのコンテナを、電源だけで4台使う計算になります。

具現化の障壁となりかねないこの電源の大きさは、現状すでに織り込み済みのようです。政策評価書では、電池電源の民生技術の進展が早いことを踏まえ、「将来的により良い民生技術に置き換えていくことを前提としたモジュール化設計とする」方針を示しています。

米海軍の開発と2021年末の凍結

レールガンの開発は、海外でも行われてきました。

米海軍は2001年からの予備研究を経て、2005年にEMRG(Electromagnetic Railgun、電磁レールガン)の開発を始めました。当初は上陸部隊を支える対地火力支援の砲として構想され、のちにミサイル防衛への転用可能性が関心を集めます。

BAE SystemsとGeneral Atomicsが試作機を2基つくり、海軍は2012年から評価を開始しました。公表された弾速は時速4,500から5,600マイルで、海面でマッハ5.9から7.4に相当します。

2005年から2021年までの支出は、総額9億5,460万ドルでした。

ところが米海軍は、FY2022(2022会計年度)の予算要求で作業停止を提案し、研究開発費を要求しませんでした。海軍は声明で、2021年末でレールガンの研究開発を凍結(pause)すると説明しています(米議会調査局が報道経由の声明として収録)。

理由として挙がったのは、財政上の制約、戦闘システムへの統合の難しさ、他の兵器コンセプトの技術成熟の見込みの3つです。資源は指向性エネルギー兵器(レーザーや高出力マイクロ波を照射して目標を狙う兵器など)や極超音速ミサイル、電子戦システムへ振り向けるとされました。

口径40mmで達成した初速2,300m/s

一方の日本では、2016年度から2022年度にかけて、防衛装備庁が「電磁加速システムの研究」で口径40mmの砲を使い、弾丸の高初速化とレールの耐久性向上に取り組みました。

その到達点が、弾丸初速2,300m/s以上です。砲口を出る瞬間の速度が秒速2.3km以上という意味で、海面付近の音速で換算すると約マッハ6.7に相当します(換算は編集部注記で、一次資料にマッハ表記はありません)。

もうひとつの到達点が、砲身命数(レールが撃てる回数の目安)200発以上です。高初速化と並ぶ研究目標だったレールの耐久性も、ここで具体的に数値化されました。

2021年8月には後継となる「将来レールガンの研究」の政策評価がまとまり、2022年度から研究試作が始まります。評価時に見込まれた研究試作の総経費は約85億円で、実施するのは防衛装備庁の陸上装備研究所です。

試験艦あすかでの洋上射撃

そして2025年6月から7月上旬、防衛装備庁は海上自衛隊の支援を受け、試験艦「あすか」の後部飛行甲板にレールガンを載せて洋上射撃試験を行いました。

標的船への射撃では複数発の命中を確認しました。射角0度と45度で弾道特性のデータも取得し、試験は成功しています。

海の上で撃つために、砲には陸上試験になかった改修が入っています。海水の飛沫から砲身を守るシェル、照準用のガンカメラ、砲身を上下に振る俯仰機能、そして船の揺れに耐えるための補強です。

技術シンポジウム2025で示されたロードマップでは、この洋上射撃試験が「現在」の位置に置かれています。

未実証のまま残る4つの目標

では、公式の評価はどうなっているのでしょうか。

防衛装備庁が2026年3月時点の評価として同年5月に公表したプロジェクト管理資料では、将来レールガンはまだ「構想段階」です。取得する数も、研究・開発段階へ進む時期も未定とされています。

達成目標は、連射性能、弾道性能、射撃統制機能(狙いを定めて発射を制御する機能)、破片放出機能(弾丸から破片を放出して目標に効果を与える機能)の4項目です。実証値はいずれも「未実証」とされています。

この4項目は、2024年度から2028年度にかけて研究試作と並行して進む所内試験で確認する計画です。破片放出機能までが基本設計に含まれる計画となっています。

現状の砲は単射で、高速の連射はこれからの課題です。

費用に関しては、範囲の違う2つの数字があります。2021年の政策評価書に載るのは、研究試作1事業の評価時の予定額として約85億円です。

2026年5月のプロジェクト管理資料は、令和4年から令和11年にかけた研究試作その1からその3と所内試験の計上額として、511億円を示しています。同資料の総合評価は「目標性能、スケジュール及びコストは計画どおり」です。

研究継続とこの先の日程

令和8年版防衛白書(2026年7月刊)は、防衛力整備計画の抜粋として「各種経空脅威への対処能力向上のための将来レールガンに関する研究を継続する」と記載しています。

国際協力も動いています。2024年5月には防衛省、フランス国防省、ドイツ国防省、仏独サン=ルイ研究所が「レールガン技術の協力に係る実施要領」に署名し、早期実用化に向けて取り組んでいます。

一方、2026年8月末に公表された令和9年度概算要求の概要では、本文テキストに「レールガン」の語が見当たりません(図中の文字は未確認)。ただしこの概算要求は、三文書改定に左右される事業を金額を示さない「事項要求」とする建て付けです。

2026年9月時点で、防衛装備庁の報道資料一覧に7月以降のレールガン関連の新規発表はありません。

防衛装備庁技術シンポジウム2026は、2026年11月10日と11日に開催されます。プログラムは未掲載で、レールガン関連の発表があるかどうかも未公表です。

プロジェクト管理資料には「研究終了を待たず、研究の成果を段階的に実用化することを目指す」という一文があります。単射で洋上射撃まで実証した砲の次の段階として、ロードマップは連射機能と砲外の安定した飛しょう、そして射撃管制(オンボード射撃=艦などに搭載した状態で管制して撃つ方式)を置いています。

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