「蒸気を飛ばして一気に電磁へ」中国空母・福建は米フォードにどこまで迫った?数字で比べる電磁カタパルトの実力
中国の空母「福建」と米海軍の「フォード」は、どちらも電磁カタパルトを備えた空母として、同じ物差しで比べられる段階に入りました。ただし2026年7月時点の公開情報で数字を並べると、電源の余裕と装置の信頼性に差が残ります。その差は、どれほどのものなのでしょうか。
何をどう比べるか
物差しは4つ。満載排水量、推進方式、電磁カタパルトの本数、そしてカタパルトの信頼性に固定します。
| 物差し | フォード(CVN-78) | 福建(Type 003) |
|---|---|---|
| 満載排水量 | 約10万ロングトン(約10.2万トン) | 約8万トン(推定) |
| 推進方式 | 原子力(A1B原子炉2基) | 通常動力 |
| 電磁カタパルトの本数 | EMALS 4基 | 3本 |
| カタパルトの信頼性(公的試験値) | 614サイクル(設計要件4,166サイクル) | 公的試験値の公表なし |
フォードの就役は2017年7月。蒸気カタパルトを全廃した、世界初の空母です。一方の福建は2022年6月に進水し、2025年9月には第5世代戦闘機J-35(最新世代のステルス戦闘機)を射出する試験映像を公開しています。USNI Newsによれば、中国側が公開したこの試験映像は、電磁カタパルトからステルス戦闘機を射出した初の空母例とされています。
進み方は対照的です。米国は蒸気式で数十年の経験を積んでから電磁式に移りました。中国はその蒸気式の段階を経ずに、一気に電磁式へ移行しています。
船体と電源の余裕
フォードの満載排水量は約10万ロングトン(メートル法で約10.2万トン)。現存する軍艦として最大です。推進はA1B原子炉2基による原子力で、電磁カタパルトを4基備え、原子炉が生む余剰電力で電気を大食いする射出装置を動かす設計です(米側の公表情報)。
対する福建は約8万トン(推定。中国当局は正式値を非公表)で、推進は通常動力、カタパルトは3本です。両者の間には約2万トン級の体格差があり、原子力かどうかの違いも重なります。
では、通常動力の福建は、どうやって電磁カタパルトを動かしているのでしょうか。中国側の説明は、中圧直流(MVDC=電気を直流のまま艦内に配る方式)の統合電力システムで駆動しており、空母として世界初だ、というものです。ただし、この性能を独立に検証した情報はありません。現時点では、中国側の主張にとどまります。
「614サイクル」という試験値
この比較でいちばん効く数字は、射出装置の本数でも排水量でもありません。「614」です。
米国防総省の試験評価当局(DOT&E)とGAO(米政府監査院)の評価によると、フォードのEMALS(電磁式航空機発艦装置、製造はGeneral Atomics)は、運用任務に影響する故障が起きるまでの平均射出回数が614サイクルでした。設計要件は4,166サイクル。実測は要求のおよそ7分の1にとどまっている計算です。GAOは2022年時点で、この信頼性目標の達成は2030年代までかかる見込みだと報告しています。
電磁カタパルトは、10年近く先行した米国でさえ、「動くこと」と「安定して動き続けること」の間に大きな壁が残る技術だということです。福建については、同じ物差しで測った公的な試験値が公表されていません。就役直後のいま、信頼性を数字で比べられる段階にはありません。
数字が語る結論
船体の大きさでは、約10万ロングトンのフォードが、約8万トン(推定)の福建を上回ります。電源についても、公表されている推進方式と排水量から見る限り、原子力のフォードに余裕があるとみられます。本数は4基対3本です。
一方で方式の世代では、両艦とも電磁式という同じ段階にあります。中国側が公開した試験映像において、電磁カタパルトからJ-35を射出した初の空母例とされるのは、福建の側です。そして信頼性という主役の軸では、先行するフォード自身が614サイクルという試験値と向き合っています。
どちらが上か、一律には断じられません。原子力空母を世界中に展開させる米国と、初のカタパルト空母を育てる段階の中国では、求められる仕事が違うからです。フォードが4,166サイクルという要件に向けて改善を続ける間に、就役した福建の運用データが公開情報に加わっていきます。比較の続きが書けるのは、その数字が出そろってからです。
出典(一次ソース)
- USNI News「Chinese Aircraft Carrier Fujian Launches Stealth Jet, Early Warning Aircraft in Catapult Tests」 https://news.usni.org/2025/09/22/chinese-aircraft-carrier-fujian-launches-stealth-jet-early-warning-aircraft-in-catapult-tests
- 米国防総省 選定取得報告書 CVN 78 SAR FY2022 https://www.esd.whs.mil/Portals/54/Documents/FOID/Reading%20Room/Selected_Acquisition_Reports/FY_2022_SARS/CVN%2078%20_SAR_DEC_2022_final.pdf
- 米GAO報告(GAO-22-105230)および米DOT&E年次報告(EMALS信頼性評価)
- Naval Technology/General Atomics 技術解説(EMALSの仕組み)
装備仕様・作戦情報は執筆時点(2026年7月)の公開情報に基づきます。