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数十万円のFPVドローンが「推定25億円」の攻撃ヘリを撃墜と発表!? 現代戦の「コスト非対称」を数字で読み解く

·2026-07-16·読了 9分

2026年7月15日、ウクライナ軍は報道ベースで1機約29万円とされるFPVドローン(First Person View=映像を見ながら操縦する方式の小型ドローン)で、推定23億〜29億円とされるロシア製攻撃ヘリMi-28を撃墜したと発表しました。単純比較で価格差は約8,000〜1万倍です。この桁違いの数字は、どんな根拠から積み上がっているのでしょうか。本記事は技術とコスト構造だけを数字で確かめ、戦況や被害には踏み込みません。

発表の中身はどこまで検証されているのか

発表したのは、無人システム軍(USF)司令官のブロウディ氏です。第427独立無人システム旅団「RAROG」の操縦士が、ロシア・ベルゴロド州ヴィヤゾヴォエ村付近で午前10時ごろ、Mi-28の尾部ブーム(機体後部と尾部ローターをつなぐ部分)に命中させたとしています。機体はSkyFall社製「Shrike(シュライク)」系とされます。場所も、時刻も、部隊名も具体的です。ただし、ここまではすべてウクライナ側の主張で、独立した第三者による検証はされていません。

FPVドローン vs 攻撃ヘリ 1機あたり価格 単位:円(対数目盛・1ドル150円/1ユーロ160円換算) 10万 100万 1000万 1億 10億 100億 FPVドローン(Shrike系・報道ベース) 約29万円 Mi-28(攻撃ヘリ・推定) 推定23億〜29億円 Shrikeの約29万円は、独政府がShrike約5万機分を9,000万ユーロ拠出したとの報道を機数で割った参考値(ソフト等を含む調達パッケージ・独政府の一次発表なし)。Mi-28はロシア非公表で、輸出契約からの推定値。価格差は約8,000〜1万倍(約29万円対 推定23億〜29億円・編集部計算)。
図:FPVドローン vs 攻撃ヘリ 1機あたり価格編集部作成

「約29万円」と「推定23億〜29億円」の根拠

安い側から見ます。Shrike系の単価は、報道ベースの数字です。Reutersは2026年7月、ドイツ政府がウクライナ向けにShrike約5万機分として9,000万ユーロを拠出したと報じており、単純に割ると1機約1,800ユーロ、約29万円になります(1ユーロ160円換算)。ただしドイツ国防省は作戦保全を理由にコメントを控えており、政府の一次発表はありません。ソフトなどを含む調達パッケージを機数で割った参考値です(FPVドローン一般の単価も、CSISは200〜1,000ドル=約3万〜15万円と示しています)。

この約29万円は、二人以上世帯のひと月の消費支出(総務省「家計調査」2024年平均・約30万円)とほぼ同じ額です。攻撃ヘリを狙う機体が、一世帯のひと月の暮らしと同じくらいの値段だということになります。

一方のMi-28は、ロシアが公式単価を公表していません。手がかりは輸出契約です。イラクが2012年に結んだ総額42億〜50億ドルの契約にはMi-28NE 30機が、アルジェリアの約27億ドル規模の契約にはMi-28NE 42機が含まれます。総額にはヘリ以外の装備や支援も含まれるため、単純割りでは単価は出ません。それでも、こうした契約の分析から1機あたり推定1,500万〜1,900万ドル(推定約23億〜29億円、1ドル150円換算)とされます。あくまで輸出契約に基づく推定値です。

約29万円と、推定23億〜29億円。価格差は約8,000〜1万倍です(編集部計算)。攻撃ヘリの値札1機ぶんで、約29万円のドローンを8,000〜1万機そろえられる計算になります。

年間1,000万機という生産規模

この価格差が意味を持つのは、安い側に厚い生産基盤があるからです。ゼレンスキー大統領は2026年7月の演説で「年間1,000万機のドローンを生産しており、2,000万機にする」と表明しました。国内のドローンメーカーは2022年の約10社から2025年までに500社超へ増えたと、同国政府は説明しています。ただし、これはShrikeに限らないドローン全体の数字です。そのうちShrikeが何機かまでは、ここからは読み取れません。

対照的に、攻撃ヘリの調達は数十機単位、数十億ドル規模の国家間契約で動きます。主張どおりなら、約29万円の消耗品が、推定23億円超の複雑装備を無力化しうることになります。以前紹介した防空レーザー(1発数ドルの電気代で約5万ドルの迎撃ミサイルの役割を担う)が「守る側」のコスト逆転だとすれば、今回の数字は、安価な消耗品の側から見たコスト非対称を示します。

出典(一次ソース)

  1. United24(USF司令官発表の伝達・ウクライナ軍の主張・未検証): https://united24media.com/war-in-ukraine/ukraines-fpv-drone-hunted-down-a-russian-mi-28-attack-helicopter-over-belgorod-video-20791
  2. Kyiv Post(Reuters報道の伝達・独政府の一次発表なし・Shrikeの調達額): https://www.kyivpost.com/post/80164
  3. CSIS「The Russia-Ukraine Drone War」(FPVドローンの一般的単価): https://www.csis.org/analysis/russia-ukraine-drone-war-innovation-frontlines-and-beyond
  4. Defense News(アルジェリアのMi-28NE調達): https://www.defensenews.com/home/2016/04/07/algeria-increases-order-of-russian-made-mi-28-helos-to-42/
  5. Airforce Technology(Mi-28NE解説・輸出契約に基づく推定): https://www.airforce-technology.com/projects/mi-28ne-night-hunter-attack-helicopter/
  6. 総務省統計局「家計調査」(2024年平均・二人以上世帯の消費支出): https://www.stat.go.jp/data/kakei/
  7. Ukrinform(ゼレンスキー大統領演説・生産数とメーカー数): https://www.ukrinform.net/rubric-ato/4144513-ukraine-produces-10-million-drones-every-year-says-zelensky.html

装備仕様・作戦情報は執筆時点(2026年7月16日)の公開情報に基づきます。本記事は情報提供を目的としたもので、軍事作戦等への助言ではありません。

免責本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の行動や投資、軍事作戦その他の専門的助言を目的としたものではありません。装備仕様や作戦情報は執筆時点の公開情報に基づきます。