☰
HARDTECH·WONDER
メニュー✕
領域
ドローン ロボット ミリタリー 宇宙 AI
記事の型
映像紹介 ニュース 解説
そのほか
ハードテック・カレンダー
ミリタリー 解説 技術系譜

「火薬ゼロでマッハ6.7」 国産レールガンは実用化されるのか?

火薬を使わずに弾丸を撃ち出すレールガンの開発。国内では、洋上射撃試験で標的船への命中まで到達しました。装備化の判断材料は、これからの所内試験で集められるとされています。

2026-09-28
米海軍が試験した電磁レールガンの試作機。(記事は防衛装備庁の国産レールガンについて)
米海軍が試験した電磁レールガンの試作機。(記事は防衛装備庁の国産レールガンについて)
写真:John Williams/Navy(DVIDS)Public Domain (U.S. Government work)

火薬をまったく使わず、電気の力だけで弾丸を撃ち出す砲があります。アメリカ海軍が一度開発を止めたこの砲を、日本は海の上での実射まで進めました。

レールガンは、このまま実用化にたどり着くのでしょうか。

火薬を使わない砲の構造

レールガン(電磁加速砲)は、2本のレール(電気を流す金属棒)の間に電機子(電気を流して力を受ける部品)を挟む構造です。ここに大電流を流すと、生じたローレンツ力(電流が磁場から受ける力)が弾丸を前へ押し出します。

火薬の砲では、発射薬の爆発でガスが膨張する速度に、弾丸の初速の上限が縛られます。レールガンはこの物理的な制約を超えて弾丸を速くでき、射程と威力を飛躍的に伸ばせるとされています(防衛省の政策評価書)。

レールガンは発射薬を使わないため、弾薬の扱いが安全になる利点もあります。

レールガンの弾丸は、推進装置を持ちません。そこから「小型・低コストかつ省スペースで備蓄でき、多数のミサイルによる攻撃にも効率的に対処可能とされている」という利点が挙げられています(令和8年版防衛白書)。

米海軍が2021年に止めた開発

レールガンの開発を先に進めていたのは、アメリカ海軍です。2001年からの予備研究を経て、2005年に開発を始めました。

当初は、海兵隊をはじめとする陸上部隊を支える対地射撃用として構想されました。のちに海軍は、ミサイル防衛への転用可能性に関心を強めました。

BAE SystemsとGeneral Atomicsが試作機を2基製作し、海軍は2012年から評価を始めています。

しかし2021年末、海軍は研究開発を一時停止しました。

一時停止の理由は、予算の制約、戦闘システムへの統合の難しさ、そして他の兵器概念の技術成熟の見通しだとされています(米議会調査局(CRS、議会のための調査機関)の報告書に収録された海軍の説明)。

資源は指向性エネルギー兵器(レーザーのように、エネルギーを絞って直接照射する兵器)や極超音速ミサイル、電子戦システムへ振り向けられるとされました。

レールガンの記述そのものは、2026年1月版のCRS報告書では落ちています。残っているのは、2022年4月版を参照するようにという案内だけです。

口径40mmで積み上げた日本の研究

一方の日本では、防衛装備庁陸上装備研究所が2016年度から2022年度まで「電磁加速システムの研究」を進めました。口径40mmの砲で、弾丸の高初速化とレールの耐久性向上に取り組む研究です。

この研究では、弾丸初速2,300m/s以上が達成されました(技術シンポジウム2025の資料)。海面付近の音速に換算すると約マッハ6.7に相当する速さです(換算は編集部によるもので、一次資料にマッハ表記はありません)。

大電流にさらされるレールの耐久性を示す砲身命数でも、200発以上が確認されました。

2022年度からは、後継の「将来レールガンの研究」に移り、研究試作が始まりました。

2024年5月には、防衛省がフランスとドイツの国防省、仏独サン=ルイ研究所と「レールガン技術の協力に係る実施要領」に署名しました。早期実用化に向けた取り組みのひとつです(令和8年版防衛白書)。

試験艦「あすか」での洋上射撃

そして2025年6月から7月上旬、防衛装備庁は海上自衛隊の支援を得て洋上射撃試験を実施しました。

試験艦「あすか」の後部飛行甲板にレールガンを載せ、標的船への射撃で複数発の命中を確認しています。射角0度と45度で射撃し、弾道特性のデータも取得しました。

海の上で撃つための改修も加わっています。その内容は、海水の飛沫から砲身を守るシェル、照準用のガンカメラ、砲身を上下に振る俯仰機能、船の揺れに耐える補強です。

20フィートコンテナ4台分の電源

この初速を生む電気は、コンデンサバンク(ためた電気を一気に放出できる装置)から供給されます。充電エネルギーは5MJ(メガジュール)です。

試作機は全長約6m、質量約8tです。それに対して電源は、20フィートコンテナ(海上輸送に使われる大型コンテナ)4台で構成されます。

総電気エネルギーを下げて電源の規模を小さくする高効率化は、当初からの課題です(政策評価書)。

ただし、電源のすべてを防衛技術で作り込む計画ではありません。電池電源の民生技術は進歩が速く、将来より良い民生技術に置き換える前提のモジュール化設計(部品単位で交換できる設計)にすると明記されています(政策評価書)。

技術シンポジウム2025のロードマップでも、電源関連は「民生技術の橋渡し研究等」という位置づけです。

未実証のまま残る4つの達成目標

洋上で標的に当たったのなら、実用化は目前のようにも見えます。しかし、公式の評価はそれより慎重です。

防衛装備庁が2026年5月に公表したプロジェクト管理資料で、「将来レールガン」はまだ構想段階に置かれています。装備として取得する数も、研究・開発段階へ進む時期も未定です。

達成目標は連射性能と弾道性能、射撃統制機能(目標に狙いを合わせて発射を制御する機能)、破片放出機能の4項目です。

いずれも実証値は「未実証」で、今後の所内試験で確認される予定です(破片放出機能は基本設計まで)。

想定する使い道は、従来の装備では対処が難しい極超音速誘導弾(極めて速く飛ぶミサイル)への防空と、遠距離からの打撃です。迎撃用途を見据えつつも、現時点では単射です。高速連射の実現が開発課題に挙げられています。

技術シンポジウム2025のロードマップでも、洋上射撃試験が「現在」の位置です。その先には連射機能、砲外の安定飛しょう、射撃管制(オンボード射撃)と段階が続きます。終点にあるのは「プラットフォームに合わせた装備品の研究開発」です。

それでも同じ資料の総合評価は、目標性能もスケジュールもコストも「計画どおり」です。未実証の4項目は遅れではなく、これから所内試験で実証する項目という位置づけです。

費用511億円と次の節目

費用は、令和3年(2021年)の政策評価書では研究試作1事業で約85億円でした。

2022年から2029年(令和4年から令和11年)にかけての研究試作その1からその3と所内試験を束ねた計上額は、511億円です(2026年5月のプロジェクト管理資料)。対象の範囲が違う2つの数字です。

「将来レールガンに関する研究を継続する」とされています(令和8年版防衛白書)。

一方、2026年8月末に公表された令和9年度予算の概算要求では、本文のテキストに「レールガン」の語が見当たりません(編集部がPDF全文を検索。図中の文字は未確認)。今回の概算要求では、戦略文書の改定に左右される事業は、金額を示さない「事項要求」の扱いになっています。

道筋そのものは示されています。「研究終了を待たず、研究の成果を段階的に実用化することを目指す」と明記されています(プロジェクト管理資料)。

次の節目は、2028年度(令和10年度)まで続く所内試験です。連射性能をはじめとする4つの達成目標は、ここで初めて数字として確かめられます。

11月10日と11日には防衛装備庁技術シンポジウム2026も開かれます。

洋上で標的に当てた砲に、次に問われるのは「何発続けて撃てるか」という数字です。

なお、防衛装備庁技術シンポジウム2026のプログラム(レールガン関連の発表の有無を含む)は執筆時点で公表されていません。

NEXT「電波妨害では止められない」光ファイバードローン:数十kmの細い糸でつなぐ仕組みとは?