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電気の力で弾を撃つ「レールガン」、初速マッハ6.7を達成。実用化の壁はどこにあるのか

2026-08-26
米海軍が試験した電磁レールガンの試作機。記事の主題は防衛装備庁の国産レールガンで、これは別の装置
米海軍が試験した電磁レールガンの試作機。記事の主題は防衛装備庁の国産レールガンで、これは別の装置
写真:John Williams/Navy(DVIDS)Public Domain (U.S. Government work)

火薬の代わりに電気の力で弾を加速する砲、それがレールガンです。その試作機が今年の夏、海の上で実際に標的船を射抜くことに成功しました。電気の力だけで弾はどこまで飛ぶのか、そして実用化までに何が足りないのか。開発の現在地を追います。

洋上試験に成功、初速2,300m/s

防衛装備庁は令和7年度(2025年)6月〜7月上旬、海上自衛隊の支援を得て洋上射撃試験を実施しました。試験艦「あすか(あすか)」の後部飛行甲板に口径40mmの試作レールガンを搭載し、標的船に向けて射撃。複数発の命中を確認し、射角0°と45°で弾道特性を取得して成功しました。

この試作機が達成したのは、弾丸初速2,300m/s以上という数字です。海面付近の音速(約340m/s)で換算すると、およそマッハ6.7に相当します(マッハ換算は編集部注記で、一次資料に表記はありません)。火薬を使う従来の砲では、この速度領域に到達するのは困難です。

もうひとつ注目すべきは、砲身命数(レール耐久性)200発以上を達成したことです。レールガンは巨大な電流を流すため、レールが摩耗しやすいという宿命があります。巨大な電流を流しながら、200発以上を撃てたということです。

火薬を使わない電磁加速の構造

レールガンの原理は、意外なほどシンプルです。2本のレール(電気を流す金属棒)と電機子(でんきし・電気を受ける部品)に大電流を流すと、そこにローレンツ力という力が発生します。この力で弾丸をレールに沿って加速する仕組みです。火薬(発射薬)を一切使わないため、誘爆の危険性がなく、安全性が高いとされています。

試作機の諸元を見てみると、口径40mm、全長約6m、質量約8t。電源はコンデンサバンク(電気をためる装置)で、充電エネルギーは5MJ(メガジュール)。この電源装置が20ftコンテナ4台分という規模です。つまり今のところ、砲本体よりも電源の方が場所を取ります。

洋上試験に際しては、海水飛沫から砲身を守るシェル、照準用ガンカメラ、砲身の俯仰(上下)機能、船の動揺への補強が追加されました。陸上の試験設備から、実際の艦艇に載せるための改修を経て、初めて海での射撃が可能になったのです。

開発の背景にある「極超音速誘導弾」という脅威

なぜいま、レールガンなのでしょうか。防衛省の政策評価書(令和3年8月)は、その理由を明確にしています。「脅威の高まる極超音速誘導弾による攻撃に対し、対空レールガンによる高速度弾丸は、広いレンジでの対処手段となり得るものであり、誘導弾等と組み合わせた多層的な防空が期待できる」とあります。

従来の対空誘導弾(ミサイル)は、極超音速誘導弾に対して「遠方から迎撃可能であるものの、交戦機会は限られている」とされています。政策評価書は、対空レールガンを「誘導弾等と組み合わせた多層的な防空」の一部と位置づけています。レールガン単独ではなく、既存の手段と重ねて使う構想です。

開発は段階的に進められてきました。基礎となる「電磁加速システムの研究」は2016〜2022年度(平成28〜令和4年度)、後継の「将来レールガンの研究」は2022〜2026年度(令和4〜8年度)とされています。研究試作総経費は約85億円です。

残る課題は電源の小型化と連射技術

ここが特集の核心です。レールガンは本当に「効く」のでしょうか。防衛省自身が、重要な留保を明記しています。

「レールガンは新しい装備品分野であるために具体的な運用方法・性能が定まらない」

これは、どのように使うのか、どの程度の性能が必要なのかが、まだ決まっていないという意味です。防衛省は「早期実用化のために、本研究の中で細部の運用ニーズと整合を図るとともに、模擬シナリオに基づいた射撃などの実証を行う」としていますが、運用方法も性能も白紙の状態から始めるというのが正直なところです。

技術的な課題は4つ挙げられています。①エネルギー高効率化(総電気エネルギーを下げ電源規模を小さくする)②連射技術(現状は単射で、高速連射の実現が課題)③砲外弾道・終末効果技術 ④システムインテグレーション。特に電源の問題は深刻です。現在の20ftコンテナ4台分の電源では、実艦に搭載するにはスペースを取りすぎます。

ただし、防衛省はこの点についても先を見越しています。「電池電源技術の民生での進展は早いため、研究試作の段階から電源部は、将来的により良い民生技術に置き換えていくことを前提としたモジュール化設計とする」としているのです。つまり、現在の巨大な電源はあくまで暫定措置であり、民生分野の技術進歩を待って小型化する方針です。

この先の判断ポイント

2025年の洋上射撃で、レールガンは「陸上で動く」から「海上で動く」へと一歩を進めました。次なる焦点は、防衛省が挙げる4つの課題をどれだけ詰められるかです。特に連射技術は、現状が単射であることを考えると、実用化には欠かせない要素です。複数発の弾を高速で撃ち続けられなければ、ミサイル防衛の手段としては十分に機能しません。

有識者からは「外国との技術交流による効率化及び開発リスクの低減に留意されたい」という意見も出ています。単独での開発に固執せず、国際的な技術動向も取り込みながら進めることが求められています。

令和8年度までの研究試作を終えた後、令和10年度までの所内試験で成果を検証します。そこで「使える」と判断されれば、実用化に向けた次のステップに進むことになるでしょう。逆に、ここで課題を克服できなければ、構想のまま終わる可能性もあります。電気の力で弾を撃つ砲が、本当の意味で「未来の砲」になるのか。その答えは、この先5年の開発にかかっています。

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出典(一次ソース)

  1. 防衛装備庁 技術シンポジウム2025 ポスターP-26 https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2025/pdf_exhi_pos/P-26.pdf
  2. 防衛装備庁 技術シンポジウム2025 口頭資料s11 https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2025/pdf_oral_matl/1111_1545_s11.pdf
  3. 防衛省 政策評価書「将来レールガンの研究」令和3年8月 https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2021/pdf/jizen_04_honbun.pdf
  4. 防衛装備庁公式X(Twitter) https://x.com/atla_kouhou_jp/status/1965701783092707680

装備仕様・作戦情報は執筆時点の公開情報に基づきます。

免責本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の行動や投資、軍事作戦その他の専門的助言を目的としたものではありません。装備仕様や作戦情報は執筆時点の公開情報に基づきます。