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中国「福建」は電磁カタパルトで就役、米国の新造空母は「蒸気回帰」を検討!? 射出装置70年の技術系譜

中国が電磁カタパルト空母「福建」を就役させた一方、米国は建造予定の新空母「フォード級・4番艦」の射出装置を蒸気式へ戻す計画の検討を始めました。

2026-10-02
米海軍の空母「ジェラルド・R・フォード」。記事で比較する2隻のうちの1隻
米海軍の空母「ジェラルド・R・フォード」。記事で比較する2隻のうちの1隻

中国初の電磁カタパルト空母「福建(ふっけん)」が就役した一方で、米国では建造中の空母の射出装置を蒸気式へ置き換える計画づくりが指示されました。

航空機を短い甲板から発進させる装置をめぐって、二つの海軍の動きはなぜ正反対に見えるのでしょうか。

英国生まれの蒸気カタパルト

空母の甲板は滑走路として短すぎるため、装備を積んだ最大総重量が32トン(ロッキード・マーティン公表・F-35Cの最大総重量)にもおよぶ現代の艦載機を飛ばすのには、ひと工夫が必要です。一気に加速させるために空母に射出装置をつける方法が主流で、その主役を長く務めてきたのが蒸気カタパルトです。

原型を作ったのは英海軍予備役のC.C.ミッチェル中佐でした。米海軍の公式史によれば、1952年に英空母「パーシアス」へ搭載された試験機が、フィラデルフィアの海軍工廠や洋上で試験されています。

射出装置の力の源は、艦のボイラーで作る高圧蒸気です。甲板下のシリンダーに送り込まれた蒸気がピストンを押し、ピストンにつながれた機体を引っ張って加速させます。

米海軍はこの方式をC-11型として採用し、1954年6月に空母「ハンコック」で最初の運用試験を行いました。以来、米空母は50年以上にわたり蒸気カタパルトを用いた艦載機の射出を続けてきました。

ただし蒸気は大食いです。米海軍航空システム軍団(NAVAIR)によれば、1回の射出に使う真水は約125ガロン(約470リットル)にのぼります。しかも高圧蒸気は、艦を走らせる推進機関とエネルギーの取り合いになります。そこでNAVAIRは1982年、その需要を抑える低圧型C-13 Mod 2、通称「ファット・キャット」を開発するなどし、蒸気カタパルトの欠点を補う装備開発に注力してきました。

リニアモーターで機体を押し出す電磁式

蒸気を使ったシステム体系を丸ごと置き換えるのがEMALS(電磁式航空機発艦装置。電磁力で機体を押し出す射出装置)です。開発と製造は米ゼネラル・アトミクス社が担いました。

その構造については艦載機の射出までの手順を追うと分かりやすくなります。

まず艦の電力を装置に蓄えておきます。そして、蓄えたエネルギーを半導体式の電力変換器で一気に電流に変え、甲板下のリニアモーター(回転せず直線方向に力を出すモーター)に流し込んで重たい機体ごと射出装置を加速させて射出するのです。しかもリニアモーターは推力を細かく調整できるため、コンピューター制御で「射出が終わる瞬間の速度」を機体ごとに正確に合わせられます。そしてゼネラル・アトミクスは、わずか1分未満で再充電し次の射出に備えられるとしています。

NAVAIRが挙げる利点は、加速が滑らかなこと、そして軽量な無人機から重い戦闘機まで、空母のみならず機体側への負担を抑えて幅広く運用できることです。

このような経緯があって2015年6月5日、空母「ジェラルド・R・フォード」(CVN-78)の艦上でEMALSの試験が始まりました。「フォード」は2017年7月22日に就役し、電磁カタパルトを世界で初めて採用した空母となりました。

「福建」と「フォード」 4つの指標で比べると…

それから8年あまり経った、2025年11月5日。太平洋を挟んで米国と対峙する中国の初のカタパルト空母「福建」が就役しました。ともに電磁カタパルトを搭載した空母ですが、2隻には違いがあります。

ひとつめは大きさ。中国国防部は満載排水量を「8万メートルトン超」と公表しています(正確な値は非公表。中国側が使う「吨」はメートルトン=1,000キログラム)。米空母「フォード」の満載排水量は、米海軍の公表値で「約10万ロングトン」です。ロングトン(英トン)は約1.016メートルトンなので、日本で一般的なメートルトンに換算すると約10万1600メートルトンにあたります。同じ単位に揃えると8万トン超対約10万1600トンで、大きさでは「フォード」が一回り上回ります。

次に動力源で、ここには大きな違いがあります。「フォード」はA1B原子炉2基を搭載した原子力推進で、その余剰電力で電磁カタパルトなどの高負荷システムを動かします。「福建」はエンジンを積んだ通常動力で、艦長は解放軍報に「世界最大の通常動力艦」と語っています。

そして、福建の電磁カタパルトは、「フォード」のEMALSとは別の中国で独自開発されたとされる装置です。電力供給の仕組みは公開されておらず、その技術はベールに包まれています。カタパルトの本数にも違いがあり、「フォード」がEMALS4基です。「福建」の本数は、中国側の一次発表では明らかにされていません。発着実績に関しては中国の公式発表で確認でき、これまでにJ-15T、J-35、KJ-600、そして電子戦機J-15DTの4機種で訓練を終えているとしています。

4つ目の物差しは、信頼性です。ここでは米側にだけ、公的な試験数値があります。

設計要件に届かない信頼性

米国防総省の運用試験評価局(DOT&E)は、EMALSの信頼性をMCBOMF(任務の遂行に支障を及ぼす重大故障から、次の重大故障までの平均射出回数)で測ってきました。設計要件は4,166サイクルです。つまり、艦載機を4,166回発艦させて初めて重整備を行う、という想定です。

しかし実運用試験が続けられる中で、その要件を大きく下回っています。2021年度の報告書では重大故障が相次ぎ、MCBOMFはわずか272サイクルとされました。2023年度報告では、少し改善した614という記録が公表されています。それでも、要件の約7分の1に満たないことになります。

2023年度以降、DOT&Eは新しい数値を公表しなくなりました。2024年度報告は262日間で8,725回の発艦を記録した一方、MCBOMFに関しては非公表。「十分なデータがない」としたのです。2025年度の報告では、信頼性は23、24年度のデータと比べハードとソフトの改良もあって「少しずつ改善」していると記しています。同時に、艦外の技術支援に頼る状態が続いている、と課題を指摘しました。

同報告はさらに、EMALSと着艦拘束装置AAGの信頼性が出撃回数や飛行運用に悪影響を与え続けており、実運用試験で有効性を示す上での「最大のリスク」だとしています。

実運用試験の完了予定は資料によって差があり、DOT&Eの2025年度報告では2027年度中、米会計検査院(GAO)の2026年7月報告は2028年2月としています。より新しいGAO報告書によれば、試験期間が終わる頃には1番艦の引き渡しから10年を超えます。そして2番艦となる「CVN-79」の納入も約2年遅れて、2027年3月の見込みです。

蒸気回帰の計画提出を命じた大統領覚書

設計要件を満たせない状況が続き、新造艦の納入も遅れをとっている2026年8月13日。米大統領覚書「米海軍と造船産業基盤の再建」で、大きな転換が示されました。

フォード級4番艦「ドリス・ミラー」(CVN-81)の建造について第2節で触れていて、EMALSと先進兵器エレベーターを、それぞれ蒸気式と油圧式のシステムに置き換える計画を60日以内に提出するよう担当長官に命じています。

当該覚書に書かれているその目的は「実証済みで、信頼でき、手頃な技術と艦設計を使う」とのことで、実運用試験で故障が続いていることには触れていません。もうひとつの留意点は、命じられたのがあくまで「計画の提出」であり、「CVN-81」の設計変更が実行されたわけではないことです。

CVN-81は2021年8月に鋼材の切断(建造開始)が行われており、船の骨組みで最も重要な部分である「竜骨」の据え付けは2026年後半に予定されています。納入時期は、米海軍の2027会計年度予算資料で従来の2032年2月から2034年2月へ2年ずれ込みました(造船所の建造スペースの制約が理由とされます)。覚書の60日期限は2026年10月中旬にあたります。

電磁で走る中国と、蒸気を見直す米国

2026年9月時点の構図はこうなっています。中国は電磁カタパルトの「福建」を就役させ、国防部のうたう「3空母時代」に入りました。

「福建」の艦長は「遠洋へ定期的に派遣する」と語ってきました。就役後初の洋上実兵訓練の成果は2025年11月に公表され、その後も2026年1月29日の中国国防部の定例記者会見で、報道官が「就役以来、各種の試験・訓練任務は計画どおり順調に進み、編隊としての体系的な作戦能力の形成に向かって前進している」と説明しています。ただし、太平洋へ出る遠海訓練が実施されたという公式発表は、2026年9月時点ではありません。

米国は「フォード」の運用を重ねながら(2025年6月24日に始まった展開は326日に及び、2026年5月16日に帰港。同年7月7日から定期整備に入りました)、4番艦「CVN-81」で蒸気に戻すことを検討しています。もともと2015年の時点でNAVAIRは、蒸気カタパルトを使い続けるのはニミッツ級で2059年まで、フォード級ではEMALSが蒸気カタパルトに取って代わると説明していたにも関わらずです。

残る課題を時点つきで整理します。米側はEMALSの信頼性はDOT&Eの2025年度報告時点で要件未達のままで、出撃率の実証は2026年度に持ち越されました。「福建」については、MCBOMFに相当する信頼性を示す統計が公表されておらず、4つの指標のうち信頼性については、まだ同じ土俵で比べられないのが現状です。

次にそれぞれの動向が分かるとすると覚書が求めた置換計画の期限となる2026年10月中旬。蒸気へ戻す場合の日程や費用の見積もりが含まれることとなっていて、その後何かしらの判断が示されるとみられます。

米中が新冷戦ともいわれるつばぜり合いを繰り広げるなか、その軍事力の要のひとつである空母が今後どのように開発・運用されていくのか。地政学的に両国に挟まれている日本でも、注視が必要です。

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