「8領域での安全対策と改革」米陸軍による空中衝突事故の再発防止策とは?
米陸軍は、2025年1月に発生した空中衝突事故についての行政調査の結果を公表しました。

安全対策と改革の対象は8領域
米陸軍は2026年10月8日、2025年1月29日に発生した空中衝突事故について、内部調査の結果を公表しました。事故の発生から約1年8か月を経た公表です。報告書の冒頭では犠牲者を追悼し、遺族への弔意とともに、「他のどの家族にも同じ悲劇を経験させない」という約束として調査の透明性を掲げています。
事故は2025年1月29日午後8時48分ごろ(米東部標準時)、米首都ワシントン近郊にあるロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港の南東約0.5マイル(約0.8km)の上空で起きました。同空港への着陸進入中だった民間機・アメリカン航空5342便(カンザス州ウィチタ発、CRJ700型機)と、米陸軍のヘリコプターUH-60L「ブラックホーク」が衝突し、両機ともポトマック川に墜落しました。旅客機の乗客60人・乗員4人と、ヘリコプターの乗員3人を合わせた67人全員が死亡しました(NTSB発表)。
調査の形式は、陸軍規則15-6に基づく行政調査「AR 15-6」です。報告書そのものも陸軍の情報公開サイト(foia.army.mil)で公開されています。この行政調査が扱うのは、陸軍の航空運用方針の変更すべき点の勧告です。国家運輸安全委員会(=NTSB、National Transportation Safety Board)によって行われた事故調査を置き換えるものでも、それに優越するものでもないとされています。
発表で陸軍が挙げたリスク管理と改革の対象は、8つの領域に及びます。まず、機体の耐空性(航空機が安全に飛行できる状態を保てること)、高度の把握、ADS-B(=Automatic Dependent Surveillance–Broadcast、航空機が自らの位置を周囲に自動で発信し続ける仕組み)の信頼性、コックピットでの交通状況認識の訓練です。さらに、指揮系統による監督、緊急事態への備え、安全報告、そして軍と民間航空の調整が並びます。機体の状態から人の訓練、組織の監督までをひとまとめに見直す内容です。
再発防止策は、報告書の発表を待たずに始まっています。時間的に緊急性の高い航空安全上の変更は、衝突直後、調査と並行して実施されました(米陸軍発表)。勧告された措置も、一部はすでに完了し、ほかは実施中です。陸軍は今後も実施状況を検証しながら、進捗を透明に共有し続ける方針です。そして、航空安全のために取った措置をまとめたファクトシートも併せて公開されています。


