安全柵不要の新たなヒューマノイド 「90分動いて9分充電」を繰り返す仕組みとは
米Agility Roboticsは2026年9月15日、物理的な安全柵なしで人のそばで働ける設計をうたう次世代ヒューマノイドロボット「Digit 5」を発表しました。本格的なロボット時代の幕開けとなるのでしょうか。

「安全柵なし」で人の隣に立つための三つの仕組み
米Agility Robotics(オレゴン州セイラム)は2026年9月15日、汎用ヒューマノイドロボット(人型の作業ロボット)の次世代機「Digit 5」を発表しました。
AgilityはDigit 5を、人と近接して協働的に安全に働くよう設計した同社初のヒューマノイドと位置づけています。そして従来の産業用ロボットで必要だった「物理的な安全柵なし」で、人のそばで働けることを最大の特長だとしています。
ひとつ目の柱は、人の検知機能です。独自のAIアルゴリズムと複数のセンサーで周囲の人を常時監視し、よける、止まる、座った姿勢に移る、といった対応を自律的に行います。
2つ目は「安全キュー」です。視覚と聴覚の合図で、これからどう動くつもりかを周囲の人に伝えます。
3つ目が独立した安全コントローラです。安全ではない距離に人がいるかどうかを監視するシステムで、検知した場合は即座に安全動作を発動するとしています。
この安全機構には米NVIDIAのプラットフォーム「Halos for Robotics」が採用されています。Agilityはその初のローンチパートナーとして、NVIDIA IGX ThorとHalos Coreを組み合わせます。
前世代Digit 4との諸元比較
バッテリーは、90分の稼働と9分の充電を繰り返して働く設計です。
稼働と充電の時間比にすると10:1で、前世代Digit 4の2:1から大きく進化しています。同社はこの設計で、24時間のうち20時間超の作業を可能にするとしています。
そのほかの公表諸元は、重量が284ポンド(129kg)、身長が1.81mです。最大到達高さ(手先が届く高さ)は7.2フィート(2.2m)、繰り返し持ち上げられる重さは最大50ポンド(22.7kg)です。
持ち上げられる重さはDigit 4から40%増加。新しい脚の設計と、独自のサイクロイド減速機アクチュエータ(モーターの回転を減速して大きな力に変える駆動部品)によるものだと説明しています。
前世代と公式に比較された項目は次のとおりです。
| 項目 | Digit 4 | Digit 5 |
|---|---|---|
| 最大到達高さ | 5.5フィート(約1.68m) | 7.2フィート(2.2m) |
| 稼働と充電の時間比 | 2:1 | 10:1(稼働90分:充電9分) |
| 繰り返し持ち上げられる重さ | 非公表 | 50ポンド(22.7kg)、前世代比40%増 |
手先は、ISO規格のフランジ(工具の取り付け座)で交換できるスワップ式グリッパーになりました。トート(通い箱)の搬送から、機械へのワーク供給(加工する部品を機械に渡す作業)まで、作業に応じて付け替えられます。
Digit 4が主にトート搬送の自動化に集中してきたのに対し、Digit 5はデパレタイズ(パレットから荷を下ろす作業)や検品、パレタイズ(パレットへ荷を積み付ける作業)まで、施設全体の工程を対象作業にする計画です。
なお、歩行速度と価格は公表されていません。
6万5,000時間の実績と2027年の提供計画
Digitシリーズは産業分野で約3年の稼働歴を持ち、同社はこれをヒューマノイドとして最長だとしています。前世代Digit 4の運用時間は累計6万5,000時間を超えました。
北米の顧客には、Toyota Motor Manufacturing Canadaをはじめ、Amazon、GXO、Schaefflerが名を連ねます。
産業安全基準という観点ではDigitは、第三者機関である米OSHA(労働安全衛生局)による現場評価に顧客の実際の生産ラインで合格した初のヒューマノイドとされています。Digit 5の安全機能は、この土台の上に追加されたものです。
Digit 5には2026年5月時点で、契約上の達成条件(マイルストーン)を満たすことを前提に、3億ドル超の複数年の顧客注文が入っていると同社は説明しています。
早期アクセスの提供は2027年前半、製造や倉庫、物流の事業者向けの一般提供は2027年末の見込みです。
なお、Digit 5の性能や安全機構、提供時期、受注の規模はいずれも、Churchill Capital Corp XIとの企業結合(合併による上場)に関する開示の中で、将来予想として留保されています。
そして今回、初めて北米以外への商用展開が計画に入りました。EUと英国向けに、CEマーク(EUの安全基準への適合マーク)などの取得を予定しています。
機体が実際に働く様子は、公式YouTubeの紹介映像「Introducing Digit 5」で公開されています。


